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サンゴの産卵の話
2007.8.8(水) 掲載
夏のこの時期、満月がやってくると、沖縄では各地でサンゴの産卵が見られ新聞や雑誌などを賑わしています。普段動かないサンゴが一斉に産卵する様子はとても幻想的で、最近ではこの時期の風物詩となっています。
今年6月の満月の数日後には、ミドリイシの産卵の報告が各地でありました。ミドリイシの仲間は雌雄同体で、一つの個体が精子と卵を同時に作ることができます。このため、ミドリイシの産卵ではバンドル(Bundle:束、包みの意)と呼ばれる精子と卵がつまったカプセルの放出が見られます(写真1)。沖縄では、だいたい初夏(5−6月)の満月の4、5日前後にミドリイシの産卵が見られますが、この時期はちょうど梅雨にあたり、曇天日の増加による日照量の減少、豪雨による海水塩分濃度の急激な低下や土砂流入にともなうストレス、表面海水温の一時的な低下などの影響か、産卵日がばらつくことがしばしばです。
サンゴの産卵は、オーストラリアや沖縄周辺では基本的に1年の限られた時期に産卵するという、高い同調性を示すのですが、同調性の程度には地域差が存在します。サンゴの産卵の同調性は、赤道付近では高緯度と比べると低いことが知られており、これは赤道に近いほど年間の温度範囲が小さく、サンゴの生殖に適当な水温のタイミングが多いからだと考えられています(山里 1991)。
またサンゴの産卵時期については、海水温だけでなく、日照の強さや日照時間の長さが関与していると考えられています。現在、産卵日を決定する生物学的なメカニズムの解明を目指した研究が世界各地で行なわれています。例えば、カリブ海でのサンゴの産卵について調べた研究では、積算の光量または光量の変化幅が最も強い影響を持っているとの報告がされています。また、多数のサンゴ種では、産卵可能な条件として水温が27〜28℃以上であることが必要であるとの報告がされています(van Woesik et al. 2006)。しかし産卵がだいたい夜10時前後に見られるのは毎回同じで、そのメカニズムは未だ謎のままです。
今年7月の満月の辺りではハマサンゴの産卵も観察されました(写真2、3)。雌雄同体のミドリイシとは異なり、沖縄周辺のハマサンゴは雌雄異体が主で、精子を作る個体と卵を作る個体は別々となっています。雄はまるで煙を噴出するように精子を放出します。雌は比較的小さい卵を大量に放出し、ミドリイシの産卵とはずいぶん違った様相を見せてくれます。


写真2:大浦湾のハマサンゴの放卵(撮影:西原千尋) / 写真3:大浦湾のハマサンゴの放精(撮影:西原千尋)
8月もまた、ハマサンゴやアザミサンゴの産卵が見られることが予測されています。もし夜フィールドに行くチャンスがあれば、サンゴをじっくり観察して見て下さい。1年に一度しか見られないサンゴの、普段とは異なる神秘的な光景を目の当たりにできるかもしれません。
参考文献
1)R. van Wosik, F. Lacharmoise and S. Koksal (2006) Annual cycles of solar insolation predict spawning times of Caribbean corals. Ecology Letters 9: 390-398
2)「サンゴの生物学」、山里清著、1991年、東京大学出版会
執筆者:井口亮・中村崇
サンゴの産卵の話
夏のこの時期、満月がやってくると、沖縄では各地でサンゴの産卵が見られ新聞や雑誌などを賑わしています。普段動かないサンゴが一斉に産卵する様子はとても幻想的で、最近ではこの時期の風物詩となっています。
今年6月の満月の数日後には、ミドリイシの産卵の報告が各地でありました。ミドリイシの仲間は雌雄同体で、一つの個体が精子と卵を同時に作ることができます。このため、ミドリイシの産卵ではバンドル(Bundle:束、包みの意)と呼ばれる精子と卵がつまったカプセルの放出が見られます(写真1)。沖縄では、だいたい初夏(5−6月)の満月の4、5日前後にミドリイシの産卵が見られますが、この時期はちょうど梅雨にあたり、曇天日の増加による日照量の減少、豪雨による海水塩分濃度の急激な低下や土砂流入にともなうストレス、表面海水温の一時的な低下などの影響か、産卵日がばらつくことがしばしばです。
サンゴの産卵は、オーストラリアや沖縄周辺では基本的に1年の限られた時期に産卵するという、高い同調性を示すのですが、同調性の程度には地域差が存在します。サンゴの産卵の同調性は、赤道付近では高緯度と比べると低いことが知られており、これは赤道に近いほど年間の温度範囲が小さく、サンゴの生殖に適当な水温のタイミングが多いからだと考えられています(山里 1991)。
またサンゴの産卵時期については、海水温だけでなく、日照の強さや日照時間の長さが関与していると考えられています。現在、産卵日を決定する生物学的なメカニズムの解明を目指した研究が世界各地で行なわれています。例えば、カリブ海でのサンゴの産卵について調べた研究では、積算の光量または光量の変化幅が最も強い影響を持っているとの報告がされています。また、多数のサンゴ種では、産卵可能な条件として水温が27〜28℃以上であることが必要であるとの報告がされています(van Woesik et al. 2006)。しかし産卵がだいたい夜10時前後に見られるのは毎回同じで、そのメカニズムは未だ謎のままです。
今年7月の満月の辺りではハマサンゴの産卵も観察されました(写真2、3)。雌雄同体のミドリイシとは異なり、沖縄周辺のハマサンゴは雌雄異体が主で、精子を作る個体と卵を作る個体は別々となっています。雄はまるで煙を噴出するように精子を放出します。雌は比較的小さい卵を大量に放出し、ミドリイシの産卵とはずいぶん違った様相を見せてくれます。
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写真2:大浦湾のハマサンゴの放卵(撮影:西原千尋) / 写真3:大浦湾のハマサンゴの放精(撮影:西原千尋)
8月もまた、ハマサンゴやアザミサンゴの産卵が見られることが予測されています。もし夜フィールドに行くチャンスがあれば、サンゴをじっくり観察して見て下さい。1年に一度しか見られないサンゴの、普段とは異なる神秘的な光景を目の当たりにできるかもしれません。
参考文献
2)「サンゴの生物学」、山里清著、1991年、東京大学出版会
執筆者:井口亮・中村崇
