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エジプトのリーフチェックについて

こんにちは。沖縄リーフチェック研究会会員で、青年海外協力隊としてエジプトに来ている渡辺敬久です。ハルガダ(Hurghada)という都市にある、環境庁紅海支局に勤務しています。紅海は透明度が高く、見られる生物も沖縄と異なるので、とても楽しいです。

ところで、リーフチェックをはじめとした海洋モニタリング調査をこちらで教えて実施し、定着させることが、私の業務の大きな目標の一つですが、とりあえずエジプトにいるリーフチェックコーディネーターであるDr.MoshiraさんとDr.Georgeさんご夫妻のもとで講習を受け、紅海のリーフチェックについて勉強してきました。二人ともとても明るくていい人で、私を手厚くもてなしてくれました。

講習は2日間にわたって実施され、初日はカイロとハルガダの間にあるアインソフナという地域の海の中で、二日目はカイロのDr.Moshiraさんのお宅で、調査対象種などについて確認しました。

紅海でのリーフチェックについて二日間の講習で学んだことを簡単にまとめると、以下の通りです。

  • エジプトではシナイ半島のダハブ(Dahab)などでリーフチェックが行われている。ハルガダでも実施されていたが、2001年以来実施されていない。ボランティアダイバーは、地元住民ではなく、ヨーロッパやロシアから来た観光客が多い。目的はデータを集めることよりも、むしろ環境啓蒙活動の方に重点が置かれている。
  • 紅海固有のベラである、Broomtail wrasseを調査対象の魚類としてカウントする(下写真1)。
  • サラサハタはいないので調査対象としない。
  • エジプトでは98年に地域的にサンゴの白化現象が起こったものの、それ以来大規模な白化現象は確認されていない。白く見えるサンゴのほとんどはレイシガイダマシの仲間*1、オニヒトデ、ブダイによる食痕で、リーフチェックの底質分類ではRKCになる。まちがってブリーチングとして記録するボランティアが多いので注意する。なかでもレイシガイダマシの仲間による食害は深刻で、今回も数多く目撃した(下写真2)。
  • レイシガイダマシの仲間と同じくらいの大きさの Coralliophilaという属の貝は、主にハマサンゴを好んで食べる。
  • 底質はハンドシグナルを使ってバディーと確認する。10種類の底質に対して、それぞれハンドシグナルが決められている。
  • ナマコは、どれが食用かわからないのでほぼ全部の種類を食用ナマコとして数えている→これに対して私は、本部からの通達により、日本でも3種だけにしぼってカウントしていることを説明し、この3種について後で私から写真と英名と学名をお伝えした。・ホラガイとボウシュウボラの違いを説明した。もしかしたらボウシュウボラは紅海にいないのかもしれないけど。
  • ハタの仲間は水中で大きさを判断する必要があるので、あらかじめ20cmや30cmの魚の形をした濡れても大丈夫な素材の模型を作っておき、水中でボランティアダイバーに見せて大きさを判断する練習をするというアイデアを教えてもらった。後で作ってみます。
  • 無脊椎動物を探すときは、若干浮力を増やして頭が下に来るような体勢でさがすと、探しやすく、サンゴを足で傷つけることもない。
  • もう一人、エジプトのシナイ半島のダハブにコーディネイターがいて、本部の教材を紅海版にアレンジするなど、精力的な活動を行っている。
  • シラヒゲウニは、真っ白な固体は紅海では珍しくないらしく、とくアルビノというわけではなく、全体的に日本のとは色が異なる。
  • 環境にやさしいボートダイビングに欠かせないアンカーブイは、エジプトでは10年位前から作っていて、今では近隣諸国に輸出している。
  • タカセガイの仲間はTrochus属として記録されていたが、属の名前がTectusに変わった。
  • シャコガイは誰も種までわからないので、種は記録していない。
  • ブラックバンドディズィーズ(Black Band Desease)のように、黒いバンドがサンゴに生じていても、バンドの両側のサンゴの種が異なっていれば、病気ではなく競合しているだけなので、病気と間違わないように注意する。
  • 貝による食痕で白くなっているものが、ホワイトバンドディズィーズ(White Band Disease)のように見えることがある。ボランティアダイバーがホワイトバンドディズィーズのような状態を発見した場合、近くにレイシガイダマシがいないか確認し、いなければホワイトバンドディズィーズと認め、いたら食害とみなす。
  • 枝状サンゴの食跡がオニヒトデか貝か見分けるには、食跡の場所に注目する。上部から白くなっていたらオニヒトデで、枝と枝の間の低い部分から白くなっていたら貝によるものである。
  • ブダイも多いので、ブダイによる食痕もよく見受けられる。
  • OTとされる底質のうち、紅海では日本と比べ、ホヤが少なく、変わりにホネナシサンゴが多いと感じた(下写真3)。
  • アナサンゴモドキ属のサンゴは、日本よりも見かける頻度がかなり高いと感じていたが、種数は3種だけらしい(確かな情報ではないので確認が必要)。
  • 水中でのデータシートは、プラスチックの板にそのまま書式が印刷してあり、鉛筆で記入後消せば何度でも使える。私も白い下敷きを大量に持ってきているので、同じようなものを作るつもり。キモレックのように紛失することがない点で便利。
  • 魚類調査の中で、チョウチョウウオはキンチャクダイの仲間と混同されがちだが、紅海では体に青い部分があればキンチャクダイと判断する。ただし、紅海固有種のmasked butterfly fish だけは例外で、目の周りが青い。
  • 日本で作っていた、無脊椎や魚類、底質のパウチのような水中で確認できるツールが、もっときれいに小さくコンパクトに作られてある。しかし小さすぎで水中ではボランティアダイバーに見にくいとの懸念あり。
  • 陸上でできるリーフチェックデモツール(沖縄にもある)をカイロで作り、これを見せたところ、わかりやすいと誉めていただいた。ただしカイロで作ったものは、印刷に失敗して、汚いので、改良する必要がある。

以上です。今後も、ハルガダでのリーフチェックが再開できるよう、頑張っていきます。

また、もしエジプトに来て海を見てみたい方、いらっしゃいましたら連絡いただければよろこんで案内します。沖縄リーフチェック研究会のみなさんのご活躍は、このHPで拝見しております。これからも、健康に気をつけて、活動を続けてください。

執筆者:渡辺敬久(青年海外協力隊(平成18年度3次隊)エジプト・ハルガダ隊員)

紅海固有のベラ Broomtail wrasse
写真1:紅海固有のベラであるBroomtail wrasse(学名:Cheilinius lunulatus) 
ホウキのような尾鰭と、胸鰭基部の少し上に黄色い三日月形の模様があることが特徴。 撮影:塩野恵子

レイシガイダマシの仲間Drupella sp.によるサンゴの食害 撮影:渡辺敬久レイシガイダマシの仲間Drupella sp.によるサンゴの食害 撮影:渡辺敬久
写真2:レイシガイダマシの仲間Drupella sp.によるサンゴの食害 撮影:渡辺敬久

ホネナシサンゴの仲間 撮影:渡辺敬久
写真3:ホネナシサンゴの仲間 撮影:渡辺敬久

*1: シロレイシガイダマシとヒメシロレイシガイダマシの違いを知らなかったので区別ができず、レイシガイダマシの仲間としてあるが、両種のどちらかであると思う。以下すべての「レイシガイダマシの仲間」も同様。