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「サンゴ礁保全のためのパートナーシップ 〜国際サンゴ礁年に向けて〜」
2007.4.23(月) 掲載
国際サンゴ礁イニシアティブ総会開催記念シンポジウム
「サンゴ礁保全のためのパートナーシップ 〜国際サンゴ礁年に向けて〜」
4/22(日)14:00-18:00 東京 立教大学
主催:環境省、立教大学
若林環境大臣、パラオ共和国財務大臣、小池内閣総理大臣補佐官から挨拶の後、田中律子さんからの特別講演、4つの事例報告、パネルディスカッションが行われました。その関連イベントの1つとしてEco-Exhibition(展示)と題したポスター展示会があり約30のNGOや研究所、大学からの発表がありました。
◆◆◆◆◆発表概略◆◆◆◆◆
◆田中律子氏(女優、NPOアクアプラネット代表)
14歳のときからダイビングをしておりサンゴの保全が大事だと思っている。アクアプラネットでは、活動の趣旨に賛同していただいたアーティストなどクリエイティブに関わる方々を収益の一部を寄付いただき、ボランティアダイバーとともに北谷でサンゴの移植活動(素焼きにピンを用いる)を行っている。
◆「世界のサンゴ礁の現状と危機」 クライブ・ウィルキンソン博士
(GCRMN:Global Coral Reef Monitoring Network 地球規模サンゴ礁モニタリングネットワーク*)
GCRMNはICRIのオペレーショナル・ネットワークで、サンゴ礁保全の役に立つデータや情報を提供することを目的に
世界80カ国で活動を展開している。「世界のサンゴ礁の現状(Status of Coral Reefs of the World)」と「インドネシア沖の津波が与えるサンゴ礁への影響(Status of Coral Reefs In Tsunami Affected Countries 2005)」を報告書として近年出版している。世界のサンゴ礁の20%は壊滅的な状況で、更に残りの50%は人為的な影響下で危機的な状況に置かれている。
サンゴ礁保全を進めていく上で問題となるのは、管理能力の不足、貧困拡大と人口増加という問題の認識、政治的意識の低さである。すでに世界のサンゴ礁の多くが消滅している。1998年の白化現象により世界中の多くのサンゴ礁がダメージを受けたがそのうち40%が回復している(=60%は回復しないままである)。残されたサンゴ礁のうち24%が危機的状況(人為的措置がない場合)、26%のサンゴ礁が中規模のリスクを負っているといえる。世界各地のサンゴ礁域の現状について調べたが、特に人口が集中していて、経済活動が活発な東南アジア地域でサンゴが危機に瀕している割合が最も高いといえる。
*東南アジアでは37%のサンゴが死滅、残されたサンゴ礁のうち47%が危機的状況、37%が中規模のリスクを負っている。
*カリブ海では10%のサンゴが死滅、残されたサンゴ礁のうち35%が危機的状況、26%が中規模のリスクを負っている。
一方で人為的影響がほとんどない太平洋では3%程度しか死滅していないことが確認されているので東南アジアのサンゴ礁の危機的状況が人為的影響によるものであることは間違いないと考えられる。
サンゴ礁へ影響を与えている脅威は主として下記の事項である;
・白化現象
・二酸化炭素上昇 (サンゴの石灰化を妨げる)
・サンゴの病気、外来種による影響(←人間がおびやかしている可能性大)
・過剰漁獲
・土砂の蓄積(赤土流出など)
・沿岸の開発
・富栄養化
それに関連し人間が果たすべき役割としては管理、意識、政治への反映である。現在問題となっているのは、すでに述べた管理能力の不足、貧困増加、人口増加、人々の政治への意識が低いことに加え、専門家の不足、意識&調査の不足、海中保護区域の不足、である。 2004年12月のスマトラの海で起こった津波はいつか必ずまだどこかで起こる。そして津波がサンゴ礁へ与えた影響は大きいものの(土砂流入、サンゴ転覆&干出;完全に回復するまでに5-10年もしくは20年かかる可能性あり)、人間がサンゴに与える影響は津波よりもはるかに大きいことを認識すべきである。
*1998年よりReefCheckはICRI(国際サンゴ礁イニシアティブ)とGCRMNの下に組織されています
◆「サンゴ礁の多様な価値」 エミリー・コーコラン氏、国連計画・世界自然保全モニタリングセンター
サンゴ礁には100-300億ドルの価値があり、数え切れないほどの種をはぐくみ、魚類の生育の場となり、食料資源となり(世界の漁獲資源のうち10%はサンゴ礁から)、自然の防波堤となっている。実際、70-90%の風が原因で出来る波(wind generated waves)をサンゴ礁は吸収できる。その他、薬物も発見されており、また文化的、精神的、伝統的価値があることも認識すべきである。 WRIのHP によると世界の60%のサンゴ礁が危機に瀕している。そのような状況下でこれ以上の開発を行う価値があるのかよく考えて欲しい。コンクリートがどれだけ自然の防波堤の代わりになるというのか?
Yap Environmental Protection Agency News Vol4.2002の漫画の中に美しく整備され便利に開発されたリゾートホテルがあるというのに観光客が全く来ないのはなぜかと人々が頭を抱えている図があるが、これと類似した例が世界中でまだ行われているのは嘆かわしい。
(How come we are getting less tourists when we’ve done so much work to make getting here moreconvenient?)
◆「サンゴ礁の環境教育」阿部治氏 立教大学大学院
1999年から子供パークレンジャー制度を環境省と文部省で開始した。体験型環境学習を石垣島で行っている。教材開発、サンゴ礁ウォーク、サンゴ礁シュノーケル、生き物マッピング、漂着ゴミの調査などを行っている。地元の人たちが地域に誇りを持ち価値を見出し、都会の人たちがサンゴという窓を通じて世界を知ることが大切である。
◆「石垣島・白保における地域主体のサンゴ礁保全」 上村真仁氏 WWFサンゴ礁保護研究センター
白保は約1,600人ほどからなる古くからの農村集落である。昔から命継の海、魚沸く海と言われている。120種以上のサンゴ種が確認され、300種以上の魚類が生息し、アオサンゴの群落やハマサンゴのマイクロアトールの大きな群落もある。
WWFジャパンでは2000年にしらほサンゴ村を設立し;
・所有者意識の醸成 → 海への誇りと愛着を醸成する、伝統的文化継承
・人材育成 → ボランティア、子供など
・保全の枠組みの構築
・持続可能性の向上、経済の基盤作り
に重点を置き、多くのサンゴ礁の影響が沿岸域の人間活動の影響によるということを意識し、海との関わりを持つ生活文化を尊重して活動してきた。
そして2005年7月に白保魚沸く海保全協議会を設立(会員40名)。自主ルール作り(観光のルール)、普及啓発活動(白保中学校でビーチクリーンアップ実施)、海垣作りに取り組んでいる。
◆◆◆◆◆パネル・ディスカッション概略◆◆◆◆◆
◆コーディネーター名執芳博氏(国連大学高等研究所)
ICRIは1994年に開始された、サンゴ礁と関連生態系の保全を目的とした国際的な協力の枠組みで、各国政府、国際機関、NGO、研究者などさまざまな主体が対等な立場で協力し合える国際パートナーシップである。日本のサンゴ礁は高緯度にも関わらず館山〜沖縄(太平洋岸)、佐渡〜沖縄(日本海岸)に分布しており、サンゴ種としては琉球列島では約415種、それ以北では約200種が確認されている。現在、日本のサンゴ礁生態系としては串本と慶良間諸島がラムサール条約下の保護地域に指定されている。2004年の報告によれば、世界のサンゴ礁の20%は破壊され24%が危機的な状態にあるという。
1997年以降、この10年間、サンゴ礁の状態は改善していない。多様な主体が連携してサンゴ礁保全に取り組んでいくことが必要である。そういった背景を元にICRIでは来年2008年を国際サンゴ礁年にし、多様な主体が連携してサンゴ礁保全活動に取り組むことを呼びかけている。ちょうど2008年には生物多様性条約第9回締約国会議(ドイツ、ボン)、ラムサール条約第10回締約国会議(韓国)、第11回国際サンゴ礁シンポジウム(アメリカ、フロリダ)というサンゴ礁生態系と大きく関わる重要な会議が開催されるのでそれらの事情も考慮しての制定となった。
◆中島 慶二氏 環境省那覇自然環境事務所 所長
(石西礁湖自然再生 http:://shizensaisei.com)
日本のサンゴ分布を見た場合、八重山諸島では363種、沖縄島では338種が確認されておりフィリピンの414種やGBRの330種とひけをとらない大きさである。法制度としては国立公園法の中の海中公園という制度があり石西礁湖に4つあるが、面積は非常に小さい。
1970年にオニヒトデの発生が始まり80年代後半にいったん収束、2001年から再び発生するようになった。サンゴ礁が回復しない理由としては赤土、下水、白化がある。石西礁湖を対象に、2005年には自然再生のマスタープランを作成し、2006年には自然再生協議会を設立した。短期的には人々の意識の向上を目指し、長期目標としては1972年の頃に戻すことを設定している。
◆ジョン・バルドウィン博士 GBRMPA(グレートバリアリーフ海中公園局) 国際部長
グレートバリアリーフ(GBR)海中公園は世界で2番目に大きな海中公園であり、その長さは2,000km以上、3,000のリーフを含む、日本列島とほぼ同程度の大きさを有する。「The Challenge of Size!(驚くべき大きさ!)」である。全ての生態系が同様に大切であり、生態系同士のつながり(inter-connectivity)も同様に重要である。
GBRは水質汚染(陸域の開発から、船から)、漁業、観光の危機にさらされている。GBR海中公園のゾーニング(さまざまなレベルの規制を環境に応じて設定している。立ち入り禁止区域、禁漁区、条件付禁猟区等)に関しては最近になって大改革を行い、2004年にはそれまでたったの3%であった禁猟区を33%にまでひきあげた。このゾーニング改革に関しては多くの業界を巻き込んだ。
国の政府、州政府、地元の政府、LMACs(Local Marine Advisory Committees)、RACs(Resource Advisory Committees)、科学、保全、地域の人々のパートナーシップ、漁業や観光業界のパートナーシップ、など産業界、政府機関、地元住民の連携の下、このゾーニングの大改革は行われた。このようなことは1970年以前には考えられなかった事態である。
この他、環境教育用教材としてReef ED, リーフガーディアン、Reef HQ, Reef Video Conference,などGBRMPAではさまざまな情報を提供している。
◆クリスティン・ドーソン氏 アメリカ合衆国国務省 上級自然保護担当官
U.S.Coral Reef Task Force(アメリカサンゴ礁タスクフォース)は米国におけるサンゴ礁保全を主導する枠組みとして1998年に設立された。 U.S.Coral Reef Tasf Forceは12の連邦政府関係機関、7つの州と領土、及び3つの自由連合国から成っている。2000年には、サンゴ礁保全のための国家行動計画が初めて採択され、現在は、この国家行動計画の目標と地方での活動を関連付けた地方行動戦略やその他プログラムが進行中である。この多様な主体が連携したU.S.Coral Reef Task Forceは米国において保全活動の新たな可能性と展開を生み出している。
U.S.Coral Reef Tasf ForceはICRI、AICRI(All Islands Coral Reef Initiative)と相互関係を持ち、その下部組織として運営母体があり、更にその下にワーキンググループと事務局がある。ワーキンググループはstakeholders(政策決定者)と連携を持つ。
現在は13のゴールを設置し、州レベル、国レベルで取り組みを決めている(例:サンゴ礁の地図の作成、戦略に基づく
調査、海中公園の数の増加、漁獲レベルの減少)。米国はハワイに世界最大の面積の海中公園を持つ。「Papahanaumokuakea(パパハナモクアケア) Marine National Monument」と地元の人たちがなじみやすい名前をつけた(www.coralreef.gov)。サンゴだけではなくモンクアザラシ、ハワイアンウミガメ、アホウドリなどの生息が確認されている。
◆エルブサル・サダン氏 パラオ共和国財務大臣
ミクロネシア地域における天然資源が近年急速な衰退の危機にさらされていることを受けて、ミクロネシア地域各国の首脳は、沿岸海域資源の30%および森林資源を20%を2020年までに効果的に保全することを目指した「ミクロネシア・チャレンジ」に調印した。2008年の生物多様性条約を1つの目標とし、また2010年までに生物多様性に与える影響を小さくするための持続可能な開発方法を検討する。Global Island Partnership (ICRI総会参加報告参照)という動きもあり、これらはTNC(ザ・ネイチャー・コンサーバンシー)やCI(コンサベーション・インターナショナル)等からの資金援助が内定している。
◆意見交換の様子◆
名執 : 多様な主体の連携があるが、連携を図ろうとしたきっかけは?
中島 : 環境省が出来ることはそれほどない。別の人たちの協力が必要。そういった意味で協議会を立ち上げ、様々な行政機関や民間、個人が一緒のテーブルについて話し合うことが必要であると思った。
バルドウィン博士:連携していかないと(サンゴ礁保全が)政府機関の人たちだけのものになってしまう
ドーソン氏 : 省庁の中では1つのセクションが破壊的なことをしていても他のセクションではなかなかひきしまれない。連携が大切。
名執 : これまでの難しさ、これからの課題は?
中島 : 自発的なものであるので興味を持たない人が参加しないのが問題。サンゴ礁から恩恵を受けていないけれどもサンゴ礁に影響を与えている人たちしか参加しないことが問題である。意識の向上が必要であり、一般向けの講演会等を開催していく予定。
バルドウィン博士:共通のownership(所有権)を持てば、共通のゴールが見えてくるはず。
**************************************************
◇◇◇感想◇◇◇
前回の国際サンゴ礁年(1997年)を知っているだけにこの10年間のプログレスが非常に大きいと感じます。しかしながら、ウィルキンソン博士ご発表のように世界規模でのサンゴ礁の現状(日本も含まれているわけですが)を素早く調査し報告書としてまとめるような力が日本にも欲しいと思います。日本ではNGOが行っているリーフチェック調査にしても、国が行っているモニタリング1000にしても結果をまとめて公表するというステップに非常に時間がかかるケースが多いのが現状です。
知ってはいたものの改めて驚いたのは日本の海中公園のサイズの小ささです。小さな石西礁湖の中にたったの4つしかなく海中公園自体の大きさが非常に小さいです。しかも申請さえすれば漁業等の活動すら出来る法制度の甘さ。多様なサンゴ礁生態系がこのようなことで守れるとはとても思えません。
こういったシンポジウムが開催される際、最終的結論は一般市民への普及啓蒙ということで終わりがちであるものの、私個人としては行政や科学者の責任も重いと思います。ボトムアップとトップダウンのどちらもより意識を高めしっかりと活動を進めていくべきではあるものの、トップの責任は重く、特に力を持っている管理側の方によりいっそう意識を高めて欲しいと折に触れて思います。米国代表者ドーソン氏が米国でもやはり省庁の行動に手は出せないといっていましたが、どこの国も他のセクションがやっていることには口を出せないなどと言っておらず、国民は「国の環境を守るセクション」として全てをゆだねているのですからきちんと全体を見渡して管理を進めて欲しいと思います。
現在に至っても沖縄県沿岸の各地域でコーコラン氏が示した風刺画のような光景が見られます。これに関しては一般市民の意識の向上だけでどうにかなるものではなく開発する方の側、法制度を整備する方の側の責任の方がはるかに重いと思います。実際、住民投票を行ってもその結果が反映されないというのは、現在の法制度自体に問題がある場合も多いのではと考えます。
また、開発側の説明責任もあります。バルドウィン博士(GBRMPA)の話にあったよう、GBRでは政府と地元住民、関係機関、NGOで’連携した’と言えるほど対話の場を持ったことがわかります。更にこのリストの中に科学が含まれていたように科学者の役割も大きいです。保全と書いてある役割分担はNGOが担ったのだと推測致しますが、日本の場合NGOの力も極めて弱く、特定の場所の開発や保護を決める際にその場に必要と認識もされていない場合が多いです。日本の場合は政府が決めたから即開発、というのではなく住民やNGO、科学者との対話の場をさまざまなレベルで持つことが必要なのではないかと強く思いました。
また、今回全く出てきませんでしたが科学者の役割も大きいと思います。前段落のGBR海中公園ゾーニング改善の際の地元との対話でも科学者が大きな役割を担ったと聞いています(参照:ICRI総会に参加して)。サンプルを採取させていただいている海への恩返しとして保護活動に取り組む感謝の気持ち、科学を理解するものとして一般の人たち、地元の人たちにそれを説明するという社会的責任を果たしていないように思われます。沖縄の海からもらうものだけもらうという態度ではなく真摯な態度で海への恩返しということを考えて欲しいと思います。
最後に気になったのが、国民の政治的意識の低さです。ウィルキンソン博士も今回の時間の限られた発表時間の中では深入りはしていませんでしたが、日本の場合、政治的事柄を極力避ける傾向が多いです。環境に関する政策も何もかも政治で物事は決まるのですから環境問題に興味を持つ人には特に政治にもいっそうの関心を持って欲しいと願います。
(報告 by 安部)
「サンゴ礁保全のためのパートナーシップ 〜国際サンゴ礁年に向けて〜」
国際サンゴ礁イニシアティブ総会開催記念シンポジウム
「サンゴ礁保全のためのパートナーシップ 〜国際サンゴ礁年に向けて〜」
4/22(日)14:00-18:00 東京 立教大学
主催:環境省、立教大学
若林環境大臣、パラオ共和国財務大臣、小池内閣総理大臣補佐官から挨拶の後、田中律子さんからの特別講演、4つの事例報告、パネルディスカッションが行われました。その関連イベントの1つとしてEco-Exhibition(展示)と題したポスター展示会があり約30のNGOや研究所、大学からの発表がありました。
◆◆◆◆◆発表概略◆◆◆◆◆
◆田中律子氏(女優、NPOアクアプラネット代表)
14歳のときからダイビングをしておりサンゴの保全が大事だと思っている。アクアプラネットでは、活動の趣旨に賛同していただいたアーティストなどクリエイティブに関わる方々を収益の一部を寄付いただき、ボランティアダイバーとともに北谷でサンゴの移植活動(素焼きにピンを用いる)を行っている。
◆「世界のサンゴ礁の現状と危機」 クライブ・ウィルキンソン博士
(GCRMN:Global Coral Reef Monitoring Network 地球規模サンゴ礁モニタリングネットワーク*)
GCRMNはICRIのオペレーショナル・ネットワークで、サンゴ礁保全の役に立つデータや情報を提供することを目的に
世界80カ国で活動を展開している。「世界のサンゴ礁の現状(Status of Coral Reefs of the World)」と「インドネシア沖の津波が与えるサンゴ礁への影響(Status of Coral Reefs In Tsunami Affected Countries 2005)」を報告書として近年出版している。世界のサンゴ礁の20%は壊滅的な状況で、更に残りの50%は人為的な影響下で危機的な状況に置かれている。
サンゴ礁保全を進めていく上で問題となるのは、管理能力の不足、貧困拡大と人口増加という問題の認識、政治的意識の低さである。すでに世界のサンゴ礁の多くが消滅している。1998年の白化現象により世界中の多くのサンゴ礁がダメージを受けたがそのうち40%が回復している(=60%は回復しないままである)。残されたサンゴ礁のうち24%が危機的状況(人為的措置がない場合)、26%のサンゴ礁が中規模のリスクを負っているといえる。世界各地のサンゴ礁域の現状について調べたが、特に人口が集中していて、経済活動が活発な東南アジア地域でサンゴが危機に瀕している割合が最も高いといえる。
*東南アジアでは37%のサンゴが死滅、残されたサンゴ礁のうち47%が危機的状況、37%が中規模のリスクを負っている。
*カリブ海では10%のサンゴが死滅、残されたサンゴ礁のうち35%が危機的状況、26%が中規模のリスクを負っている。
一方で人為的影響がほとんどない太平洋では3%程度しか死滅していないことが確認されているので東南アジアのサンゴ礁の危機的状況が人為的影響によるものであることは間違いないと考えられる。
サンゴ礁へ影響を与えている脅威は主として下記の事項である;
・白化現象
・二酸化炭素上昇 (サンゴの石灰化を妨げる)
・サンゴの病気、外来種による影響(←人間がおびやかしている可能性大)
・過剰漁獲
・土砂の蓄積(赤土流出など)
・沿岸の開発
・富栄養化
それに関連し人間が果たすべき役割としては管理、意識、政治への反映である。現在問題となっているのは、すでに述べた管理能力の不足、貧困増加、人口増加、人々の政治への意識が低いことに加え、専門家の不足、意識&調査の不足、海中保護区域の不足、である。 2004年12月のスマトラの海で起こった津波はいつか必ずまだどこかで起こる。そして津波がサンゴ礁へ与えた影響は大きいものの(土砂流入、サンゴ転覆&干出;完全に回復するまでに5-10年もしくは20年かかる可能性あり)、人間がサンゴに与える影響は津波よりもはるかに大きいことを認識すべきである。
*1998年よりReefCheckはICRI(国際サンゴ礁イニシアティブ)とGCRMNの下に組織されています
◆「サンゴ礁の多様な価値」 エミリー・コーコラン氏、国連計画・世界自然保全モニタリングセンター
サンゴ礁には100-300億ドルの価値があり、数え切れないほどの種をはぐくみ、魚類の生育の場となり、食料資源となり(世界の漁獲資源のうち10%はサンゴ礁から)、自然の防波堤となっている。実際、70-90%の風が原因で出来る波(wind generated waves)をサンゴ礁は吸収できる。その他、薬物も発見されており、また文化的、精神的、伝統的価値があることも認識すべきである。 WRIのHP によると世界の60%のサンゴ礁が危機に瀕している。そのような状況下でこれ以上の開発を行う価値があるのかよく考えて欲しい。コンクリートがどれだけ自然の防波堤の代わりになるというのか?
Yap Environmental Protection Agency News Vol4.2002の漫画の中に美しく整備され便利に開発されたリゾートホテルがあるというのに観光客が全く来ないのはなぜかと人々が頭を抱えている図があるが、これと類似した例が世界中でまだ行われているのは嘆かわしい。
(How come we are getting less tourists when we’ve done so much work to make getting here moreconvenient?)
◆「サンゴ礁の環境教育」阿部治氏 立教大学大学院
1999年から子供パークレンジャー制度を環境省と文部省で開始した。体験型環境学習を石垣島で行っている。教材開発、サンゴ礁ウォーク、サンゴ礁シュノーケル、生き物マッピング、漂着ゴミの調査などを行っている。地元の人たちが地域に誇りを持ち価値を見出し、都会の人たちがサンゴという窓を通じて世界を知ることが大切である。
◆「石垣島・白保における地域主体のサンゴ礁保全」 上村真仁氏 WWFサンゴ礁保護研究センター
白保は約1,600人ほどからなる古くからの農村集落である。昔から命継の海、魚沸く海と言われている。120種以上のサンゴ種が確認され、300種以上の魚類が生息し、アオサンゴの群落やハマサンゴのマイクロアトールの大きな群落もある。
WWFジャパンでは2000年にしらほサンゴ村を設立し;
・所有者意識の醸成 → 海への誇りと愛着を醸成する、伝統的文化継承
・人材育成 → ボランティア、子供など
・保全の枠組みの構築
・持続可能性の向上、経済の基盤作り
に重点を置き、多くのサンゴ礁の影響が沿岸域の人間活動の影響によるということを意識し、海との関わりを持つ生活文化を尊重して活動してきた。
そして2005年7月に白保魚沸く海保全協議会を設立(会員40名)。自主ルール作り(観光のルール)、普及啓発活動(白保中学校でビーチクリーンアップ実施)、海垣作りに取り組んでいる。
◆◆◆◆◆パネル・ディスカッション概略◆◆◆◆◆
◆コーディネーター名執芳博氏(国連大学高等研究所)
ICRIは1994年に開始された、サンゴ礁と関連生態系の保全を目的とした国際的な協力の枠組みで、各国政府、国際機関、NGO、研究者などさまざまな主体が対等な立場で協力し合える国際パートナーシップである。日本のサンゴ礁は高緯度にも関わらず館山〜沖縄(太平洋岸)、佐渡〜沖縄(日本海岸)に分布しており、サンゴ種としては琉球列島では約415種、それ以北では約200種が確認されている。現在、日本のサンゴ礁生態系としては串本と慶良間諸島がラムサール条約下の保護地域に指定されている。2004年の報告によれば、世界のサンゴ礁の20%は破壊され24%が危機的な状態にあるという。
1997年以降、この10年間、サンゴ礁の状態は改善していない。多様な主体が連携してサンゴ礁保全に取り組んでいくことが必要である。そういった背景を元にICRIでは来年2008年を国際サンゴ礁年にし、多様な主体が連携してサンゴ礁保全活動に取り組むことを呼びかけている。ちょうど2008年には生物多様性条約第9回締約国会議(ドイツ、ボン)、ラムサール条約第10回締約国会議(韓国)、第11回国際サンゴ礁シンポジウム(アメリカ、フロリダ)というサンゴ礁生態系と大きく関わる重要な会議が開催されるのでそれらの事情も考慮しての制定となった。
◆中島 慶二氏 環境省那覇自然環境事務所 所長
(石西礁湖自然再生 http:://shizensaisei.com)
日本のサンゴ分布を見た場合、八重山諸島では363種、沖縄島では338種が確認されておりフィリピンの414種やGBRの330種とひけをとらない大きさである。法制度としては国立公園法の中の海中公園という制度があり石西礁湖に4つあるが、面積は非常に小さい。
1970年にオニヒトデの発生が始まり80年代後半にいったん収束、2001年から再び発生するようになった。サンゴ礁が回復しない理由としては赤土、下水、白化がある。石西礁湖を対象に、2005年には自然再生のマスタープランを作成し、2006年には自然再生協議会を設立した。短期的には人々の意識の向上を目指し、長期目標としては1972年の頃に戻すことを設定している。
◆ジョン・バルドウィン博士 GBRMPA(グレートバリアリーフ海中公園局) 国際部長
グレートバリアリーフ(GBR)海中公園は世界で2番目に大きな海中公園であり、その長さは2,000km以上、3,000のリーフを含む、日本列島とほぼ同程度の大きさを有する。「The Challenge of Size!(驚くべき大きさ!)」である。全ての生態系が同様に大切であり、生態系同士のつながり(inter-connectivity)も同様に重要である。
GBRは水質汚染(陸域の開発から、船から)、漁業、観光の危機にさらされている。GBR海中公園のゾーニング(さまざまなレベルの規制を環境に応じて設定している。立ち入り禁止区域、禁漁区、条件付禁猟区等)に関しては最近になって大改革を行い、2004年にはそれまでたったの3%であった禁猟区を33%にまでひきあげた。このゾーニング改革に関しては多くの業界を巻き込んだ。
国の政府、州政府、地元の政府、LMACs(Local Marine Advisory Committees)、RACs(Resource Advisory Committees)、科学、保全、地域の人々のパートナーシップ、漁業や観光業界のパートナーシップ、など産業界、政府機関、地元住民の連携の下、このゾーニングの大改革は行われた。このようなことは1970年以前には考えられなかった事態である。
この他、環境教育用教材としてReef ED, リーフガーディアン、Reef HQ, Reef Video Conference,などGBRMPAではさまざまな情報を提供している。
◆クリスティン・ドーソン氏 アメリカ合衆国国務省 上級自然保護担当官
U.S.Coral Reef Task Force(アメリカサンゴ礁タスクフォース)は米国におけるサンゴ礁保全を主導する枠組みとして1998年に設立された。 U.S.Coral Reef Tasf Forceは12の連邦政府関係機関、7つの州と領土、及び3つの自由連合国から成っている。2000年には、サンゴ礁保全のための国家行動計画が初めて採択され、現在は、この国家行動計画の目標と地方での活動を関連付けた地方行動戦略やその他プログラムが進行中である。この多様な主体が連携したU.S.Coral Reef Task Forceは米国において保全活動の新たな可能性と展開を生み出している。
U.S.Coral Reef Tasf ForceはICRI、AICRI(All Islands Coral Reef Initiative)と相互関係を持ち、その下部組織として運営母体があり、更にその下にワーキンググループと事務局がある。ワーキンググループはstakeholders(政策決定者)と連携を持つ。
現在は13のゴールを設置し、州レベル、国レベルで取り組みを決めている(例:サンゴ礁の地図の作成、戦略に基づく
調査、海中公園の数の増加、漁獲レベルの減少)。米国はハワイに世界最大の面積の海中公園を持つ。「Papahanaumokuakea(パパハナモクアケア) Marine National Monument」と地元の人たちがなじみやすい名前をつけた(www.coralreef.gov)。サンゴだけではなくモンクアザラシ、ハワイアンウミガメ、アホウドリなどの生息が確認されている。
◆エルブサル・サダン氏 パラオ共和国財務大臣
ミクロネシア地域における天然資源が近年急速な衰退の危機にさらされていることを受けて、ミクロネシア地域各国の首脳は、沿岸海域資源の30%および森林資源を20%を2020年までに効果的に保全することを目指した「ミクロネシア・チャレンジ」に調印した。2008年の生物多様性条約を1つの目標とし、また2010年までに生物多様性に与える影響を小さくするための持続可能な開発方法を検討する。Global Island Partnership (ICRI総会参加報告参照)という動きもあり、これらはTNC(ザ・ネイチャー・コンサーバンシー)やCI(コンサベーション・インターナショナル)等からの資金援助が内定している。
◆意見交換の様子◆
名執 : 多様な主体の連携があるが、連携を図ろうとしたきっかけは?
中島 : 環境省が出来ることはそれほどない。別の人たちの協力が必要。そういった意味で協議会を立ち上げ、様々な行政機関や民間、個人が一緒のテーブルについて話し合うことが必要であると思った。
バルドウィン博士:連携していかないと(サンゴ礁保全が)政府機関の人たちだけのものになってしまう
ドーソン氏 : 省庁の中では1つのセクションが破壊的なことをしていても他のセクションではなかなかひきしまれない。連携が大切。
名執 : これまでの難しさ、これからの課題は?
中島 : 自発的なものであるので興味を持たない人が参加しないのが問題。サンゴ礁から恩恵を受けていないけれどもサンゴ礁に影響を与えている人たちしか参加しないことが問題である。意識の向上が必要であり、一般向けの講演会等を開催していく予定。
バルドウィン博士:共通のownership(所有権)を持てば、共通のゴールが見えてくるはず。
**************************************************
◇◇◇感想◇◇◇
前回の国際サンゴ礁年(1997年)を知っているだけにこの10年間のプログレスが非常に大きいと感じます。しかしながら、ウィルキンソン博士ご発表のように世界規模でのサンゴ礁の現状(日本も含まれているわけですが)を素早く調査し報告書としてまとめるような力が日本にも欲しいと思います。日本ではNGOが行っているリーフチェック調査にしても、国が行っているモニタリング1000にしても結果をまとめて公表するというステップに非常に時間がかかるケースが多いのが現状です。
知ってはいたものの改めて驚いたのは日本の海中公園のサイズの小ささです。小さな石西礁湖の中にたったの4つしかなく海中公園自体の大きさが非常に小さいです。しかも申請さえすれば漁業等の活動すら出来る法制度の甘さ。多様なサンゴ礁生態系がこのようなことで守れるとはとても思えません。
こういったシンポジウムが開催される際、最終的結論は一般市民への普及啓蒙ということで終わりがちであるものの、私個人としては行政や科学者の責任も重いと思います。ボトムアップとトップダウンのどちらもより意識を高めしっかりと活動を進めていくべきではあるものの、トップの責任は重く、特に力を持っている管理側の方によりいっそう意識を高めて欲しいと折に触れて思います。米国代表者ドーソン氏が米国でもやはり省庁の行動に手は出せないといっていましたが、どこの国も他のセクションがやっていることには口を出せないなどと言っておらず、国民は「国の環境を守るセクション」として全てをゆだねているのですからきちんと全体を見渡して管理を進めて欲しいと思います。
現在に至っても沖縄県沿岸の各地域でコーコラン氏が示した風刺画のような光景が見られます。これに関しては一般市民の意識の向上だけでどうにかなるものではなく開発する方の側、法制度を整備する方の側の責任の方がはるかに重いと思います。実際、住民投票を行ってもその結果が反映されないというのは、現在の法制度自体に問題がある場合も多いのではと考えます。
また、開発側の説明責任もあります。バルドウィン博士(GBRMPA)の話にあったよう、GBRでは政府と地元住民、関係機関、NGOで’連携した’と言えるほど対話の場を持ったことがわかります。更にこのリストの中に科学が含まれていたように科学者の役割も大きいです。保全と書いてある役割分担はNGOが担ったのだと推測致しますが、日本の場合NGOの力も極めて弱く、特定の場所の開発や保護を決める際にその場に必要と認識もされていない場合が多いです。日本の場合は政府が決めたから即開発、というのではなく住民やNGO、科学者との対話の場をさまざまなレベルで持つことが必要なのではないかと強く思いました。
また、今回全く出てきませんでしたが科学者の役割も大きいと思います。前段落のGBR海中公園ゾーニング改善の際の地元との対話でも科学者が大きな役割を担ったと聞いています(参照:ICRI総会に参加して)。サンプルを採取させていただいている海への恩返しとして保護活動に取り組む感謝の気持ち、科学を理解するものとして一般の人たち、地元の人たちにそれを説明するという社会的責任を果たしていないように思われます。沖縄の海からもらうものだけもらうという態度ではなく真摯な態度で海への恩返しということを考えて欲しいと思います。
最後に気になったのが、国民の政治的意識の低さです。ウィルキンソン博士も今回の時間の限られた発表時間の中では深入りはしていませんでしたが、日本の場合、政治的事柄を極力避ける傾向が多いです。環境に関する政策も何もかも政治で物事は決まるのですから環境問題に興味を持つ人には特に政治にもいっそうの関心を持って欲しいと願います。
(報告 by 安部)
