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サンゴ分類学の大家、Veron博士とお会いして
2007.3.30(金) 掲載
琉球大学理工学研究科の諏訪僚太です。沖縄リーフチェック研究会のホームページにも掲載されていましたが、 今年(2007年)の3月10日に、日本語や英語で手に入るサンゴの図鑑としてはもっとも有名な 「日本の造礁サンゴ類」と「Corals of the world」の執筆者である、Charlie Veron博士の講演が琉大で行われました。
講演の内容はサンゴの進化はどこから始まったのか、そして高等生物界では割合と稀な種間交雑を伴うその特殊な進化の機構(サンゴの網目状進化)についての自説に触れられた後、講演の後半は地球の環境変動とサンゴ礁の危機についてお話をされました。僕にとって興味深かったのは当然とは言え、あのVeron博士も熱心に環境問題について真剣に考えているということでした(過去に石垣島白保の空港建設反対について、Veron博士はオーストラリアから日豪初の生中継にてインタビューを受けるなど色々と関係されていました)。あれだけお年を召した偉大なサンゴの分類学者が、彼にとっては専門外であるにも関わらず、講演時間の半分程度までを環境問題に割かれたことは、改めてこの問題がシリアスだということを感じさせられました。

Veron博士の著書の一つ、”Corals in Space and Time: The Biogeography and Evolution of the Scleractinia”。表紙のイラストは、サンゴの種分化は分岐と融合を繰り返してきたとする、網目状進化のイメージを表現している。
その後首里城の観光に研究室の先輩と僕とVeron博士の3人で出かけました。 せっかくなので、この機会にサンゴ礁に関するいくつかの質問をしました。
Q. どのサンゴ種が一番お気に入りですか?
A. Acropora palmata。この種は生きた化石として重要であり、美しいサンゴでもあり個人的に思い入れがあります。
注)Acropora palmata:この種はカリブ海などに生息しその形がヘラジカの角に似ているためElkhorn coralと呼ばれています。
Q. どのサンゴ礁が一番お気に入りですか?
A. 鳥の形をしているニューギニア島(パプアニューギニア)の嘴の部分(西部)にある海域。非常に美しい。
Q. サンゴに長く携わっている研究者は環境問題、保護活動に興味を持つべきだと思いますか?
A. 思います。最近特に強く思います。アル・ゴアのドキュメンタリー映画(不都合な真実)を見ても分かりますが国々の足並みが揃っていません。これは研究者にも言えることで重大な問題として受け止めるべきです。長い間世界中のサンゴ礁に潜っていますが昔の状態を保っているサンゴ礁はありません。若い君の目には健康に見えるサンゴ礁も私にとっては昔と明らかな違いが見えます。大きな魚が減っています。サンゴ礁の生き物の種類や量が減っています。このことについて真剣に考えなければなりません。
Q. サンゴの移植についてどう思いますか?
A. 時間と労力の無駄ではないかと思います。アクアリストやショップは喜ぶかもしれませんが自然にとってはナンセンスだと思います。ただし、今回の滞在中に訪れた水族館(ちゅら海水族館)のバックヤード水槽でAcropora tanegashimensisを見つけました。採集場所などは不明でしたがこの種はもう長らく海中で出会っていません。絶滅したか絶滅寸前だろうと思っていました。もしもこういう形でサンゴが養殖されるのであればサンゴ骨格ではなく生体そのものを知ることができるので素晴らしいことだと思います。
注)Acropora tanegashimensis:和名はタネガシマミドリイシ。Veron博士によって1990年に同定された種のようです。
最後に僕個人の稚拙な意見ですが、今までばらばらだったいろいろな人や考え方、技術を初めて一つにしなければいけない機会が環境問題という形でいま目の前に来ていると思います。意外と多くの人や組織にとって協力するのは初めてのことであり、かつ避けて通れないものなのではないかと思います。この上辺だけではすまされないチャレンジがどのような形で進んでいくのか、非常に興味を持っています。戦争や宇宙開発に使うエネルギーを環境問題に回せないものでしょうか。Veron博士はオーストラリアの大統領選挙に合わせて、今年の終わりごろにサンゴ礁と環境破壊に関する本を出版されるそうですので楽しみにしています。
執筆者:諏訪僚太
サンゴ分類学の大家、Veron博士とお会いして
琉球大学理工学研究科の諏訪僚太です。沖縄リーフチェック研究会のホームページにも掲載されていましたが、 今年(2007年)の3月10日に、日本語や英語で手に入るサンゴの図鑑としてはもっとも有名な 「日本の造礁サンゴ類」と「Corals of the world」の執筆者である、Charlie Veron博士の講演が琉大で行われました。
講演の内容はサンゴの進化はどこから始まったのか、そして高等生物界では割合と稀な種間交雑を伴うその特殊な進化の機構(サンゴの網目状進化)についての自説に触れられた後、講演の後半は地球の環境変動とサンゴ礁の危機についてお話をされました。僕にとって興味深かったのは当然とは言え、あのVeron博士も熱心に環境問題について真剣に考えているということでした(過去に石垣島白保の空港建設反対について、Veron博士はオーストラリアから日豪初の生中継にてインタビューを受けるなど色々と関係されていました)。あれだけお年を召した偉大なサンゴの分類学者が、彼にとっては専門外であるにも関わらず、講演時間の半分程度までを環境問題に割かれたことは、改めてこの問題がシリアスだということを感じさせられました。

Veron博士の著書の一つ、”Corals in Space and Time: The Biogeography and Evolution of the Scleractinia”。表紙のイラストは、サンゴの種分化は分岐と融合を繰り返してきたとする、網目状進化のイメージを表現している。
その後首里城の観光に研究室の先輩と僕とVeron博士の3人で出かけました。 せっかくなので、この機会にサンゴ礁に関するいくつかの質問をしました。
Q. どのサンゴ種が一番お気に入りですか?
A. Acropora palmata。この種は生きた化石として重要であり、美しいサンゴでもあり個人的に思い入れがあります。
注)Acropora palmata:この種はカリブ海などに生息しその形がヘラジカの角に似ているためElkhorn coralと呼ばれています。
Q. どのサンゴ礁が一番お気に入りですか?
A. 鳥の形をしているニューギニア島(パプアニューギニア)の嘴の部分(西部)にある海域。非常に美しい。
Q. サンゴに長く携わっている研究者は環境問題、保護活動に興味を持つべきだと思いますか?
A. 思います。最近特に強く思います。アル・ゴアのドキュメンタリー映画(不都合な真実)を見ても分かりますが国々の足並みが揃っていません。これは研究者にも言えることで重大な問題として受け止めるべきです。長い間世界中のサンゴ礁に潜っていますが昔の状態を保っているサンゴ礁はありません。若い君の目には健康に見えるサンゴ礁も私にとっては昔と明らかな違いが見えます。大きな魚が減っています。サンゴ礁の生き物の種類や量が減っています。このことについて真剣に考えなければなりません。
Q. サンゴの移植についてどう思いますか?
A. 時間と労力の無駄ではないかと思います。アクアリストやショップは喜ぶかもしれませんが自然にとってはナンセンスだと思います。ただし、今回の滞在中に訪れた水族館(ちゅら海水族館)のバックヤード水槽でAcropora tanegashimensisを見つけました。採集場所などは不明でしたがこの種はもう長らく海中で出会っていません。絶滅したか絶滅寸前だろうと思っていました。もしもこういう形でサンゴが養殖されるのであればサンゴ骨格ではなく生体そのものを知ることができるので素晴らしいことだと思います。
注)Acropora tanegashimensis:和名はタネガシマミドリイシ。Veron博士によって1990年に同定された種のようです。
最後に僕個人の稚拙な意見ですが、今までばらばらだったいろいろな人や考え方、技術を初めて一つにしなければいけない機会が環境問題という形でいま目の前に来ていると思います。意外と多くの人や組織にとって協力するのは初めてのことであり、かつ避けて通れないものなのではないかと思います。この上辺だけではすまされないチャレンジがどのような形で進んでいくのか、非常に興味を持っています。戦争や宇宙開発に使うエネルギーを環境問題に回せないものでしょうか。Veron博士はオーストラリアの大統領選挙に合わせて、今年の終わりごろにサンゴ礁と環境破壊に関する本を出版されるそうですので楽しみにしています。
執筆者:諏訪僚太
